2022年2月22日
本当に偶然だったが、その偶然を見てしまう自分の間の悪さを呪いたい。そういえば最初もそうだったなぁと、遠い目になり思い出すのはほんの一ヶ月ほど前の深夜のやり取り。知るつもりもなかった同期のあれやこれ。今その時と同じ気持ちだ。知りたくなかった。何で俺はこうも間が悪いんだ。そんな運はいらない。
そんなことを思いつつ、複合機から必要資料を取った宮川は、自席に戻り資料と今朝回ってきた情報セキュリティに関する回覧を交換して再び席を離れる。
そうして近寄るのは、隣の島の一席。
仕事中、全く笑わないわけではないけれど、明らかに作り笑みで業務用という仮面しか付けていない男が、そうではないと百人見たら百人がそう言うであろう顔をしてスマホを操作している。
幸いを表に出して、スマホの向こう側の相手が特別なのだと論外に語る空気。
今迄の神谷には見られなかった表情をさせる、スマホの向こう側が誰かを知っている宮川としては胃が痛い。
「神谷次長、お疲れ様」
足を緩く組んでスマホを弄っている同期に声をかければ、上目が宮川を見る。その前でひらりと回覧をはためかせた後に視線を誘導するように机に置き、そのまま手を付き顔を近付けた。
「幸せが漏れてるから顔戻せ」
宮川の言葉に、神谷が目を見開く。それを見て、本気で気付いてなかったのかと呆れて、回覧を通路側に立てて簡易の壁にした。
「……そんなに?」
「じゃなかったらわざわざ来ない」
動揺を隠すためか、落ち着きたいのか。
コーヒーの紙コップを口元に持ってきた神谷は、視線を宮川に向けたあと、思い切り逸らす。
「仕事中、ちょっとほかごとしようといいけど、判りやすすぎて気づかれるぞ」
「わ、るかった」
肩を竦めて小さくなろうとする神谷にため息一つで話題を切り、立ち上がる。
「気をつける」
「そうしてくれ」
俺の平和のために、と最後にそう言いおいて、仕事に戻った。