朝涼

際限ないのはどちらか

2022年3月15日

 殊更丁寧に。神谷の内部をひとつも傷付けないように、けれど遠慮をしているわけではないという動きで探られ触れられる。
 きゅう、と無意識にその指を締め付け離すまいと蠢く内壁をどうしようもない。狭くなった壁を指を広げることで割られると、背骨を伝って悦が登ってくる。
「……ん、ぅ」
 足の指を丸め両膝を狭めてしまうが、間にある梶の身体が閉じ切らせてくれない。梶の脇腹に触れた膝が、梶によって再び外側へと開かれる。
 同時に内部を探る指が弱い所を擦り、ひくりと身体が跳ねた。
 腹の裏側を指が幾度も往復する。逃げるように腰が浮くが、当然それから逃げられるはずもなく。
「それ、やめ……」
 腕を伸ばして梶の手首を掴むと、指が止まる代わりに口付けられた。それに応えながら呼吸を整えた。
「一人でイくのは嫌だって、いつも言ってるだろ」
 隙あらばというべきなのか、梶はこちらを先に達かせようとする。
 こちらだけ先に向こうへいくと、梶がその気になっていないと気が付かないかもしれない。そんな恐怖がどうしてもあって、挿入されてからでないと安心出来ないのだ。
 梶の手首を掴んだまま、上半身を起こしながら指を抜く。口付けながら梶の身体を押し倒し、腹の上に跨った。
 口付けながら後ろ手で下着をずらし、梶の陰茎を引っ張り出す。人差し指と中指で挟んで上下させ、親指で浮いた血管を潰すように力をこめると、ひくりと大きくなる。
「出るからやめろ」
「俺のことはイかせようとしたくせに」
 文句を言いつつも腰を浮かせて、柔らかくなった口に当てた。それを見て、梶が気配を慌てさせる。
「おい、ゴム」
「いらない」
 抵抗されるより先に腰を沈めると、梶が息を飲む。それを上から観察しながら苦しくない程度に内部に熱を収めた。
「は……」
 0.02ミリの膜がないために、いつもよりも梶が近く、熱い。
 シーツについていた掌をそれぞれ梶の指に触れさせると、意図を察して腰の横で両指をそれぞれ絡めてくれる。梶の陰茎が触れる内部は気持ちが良いが、絡まる指は安堵がある。
「ん、ん……」
「――」
 腰を上げて落として。自発的な動きとは別に、締め付ける内部は反射の連続で制御出来ない。奥の方に先端を引っ掛けて掻くと疼痛が生まれる。それだけで神谷の陰茎から先走りが流れる気持ち良さ。
「気持ちいい、か?」
「ああ」
 腰を落としたタイミングで突かれ、足が跳ねる。肌を触れ合わせながら腰を前後させ、自分の悦を高めていく。
「俺も、……こうやって手、握ってると、安心する」
「……安心」
「ん」
 セックスなんて、欲を解消するための方法でしかなかったし、その間にお互いに機嫌が良くなるリップサービスをしていればいいと、そんな考えだったのに。
 神谷の身体を丁寧に扱い、どちらにとっても一方的ではない触れ方をされて、慈しまれて。
 言葉ではなく態度で大切にされること。その心地良さを知ってしまった。
 神谷が腰を動かし、梶が突いてくるたびに結合部から水音が響く。
 緩やかな動きはもどかしくて気持ちが良くて心地良い。
「は――……、溶けそ……」
 額から流れてきて口の中に入ってきそうな汗を舐めると、内部の梶が大きくなる。判りやすい反応が嬉しい。
「っ、おい、抜け」
「いいよ、梶の精液ちょうだい」
「――ッ、てめ、」
 意図的に締め付けると、ひくりと梶の腰が揺れる。
 下から睨みつけてきて、それなのに腰はこちらの弱い所を攻めてくるのだから、堪らない。
「ぁ、あ、つよ、い」
「はっ、」
 肌が触れ合うほどに繋がると苦しさと気持ち良さが混ざって呼吸が浅くなる。
 下腹部が震えて、痙攣した内部が梶の陰茎の硬さをダイレクトに伝えてくるため、脳みそが痺れて思考力が低下していく感覚。
「――く」
 梶の呻きと共に、びく、と内部の陰茎が膨れ、じわりと熱さが広がる。注がれる液体と満たされる隙間に、顎を逸らしてその感触を受け止めた。
「ん〜〜……っ」
 梶の精液に後押しされるように神谷の陰茎も欲を吐き出した。痙攣する身体が言うことを効かない。
「は、っ……」
 繋いだ掌をそのままに、腕を広げながら上半身を倒す。舌同士を触れ合わせ、唾液を混ぜ合わせ、キスを深くしていくと、内部の熱がひくりと震えた。
「腰揺れてんぞ」
「だって、きもちい……」
 抜けないように気をつけながらも、動くのをやめられない。
 梶は片手を解いて神谷の背中を支えて体勢をひっくり返す。今までと逆になり梶を見上げることになった。

 抜かずに、なんてこの歳ではなかなかないことだ。
 けれど悪くないと思ってしまうし、それほどに自分の身体に夢中になってくれることが嬉しくて、一度は外れた指をもう一度繋いで欲に溺れた。