朝涼

原作利土ペーパー

2025年5月7日
2025/05/03(土) SUPER COMIC CITY 32 day1- 発行

「草臥れてるなあ」
「…………」
 雨風が凌げて壁があり、周りから隔離されているが故に気配が追いやすい。そんな隠れ家にしている拠点はいくつかあり、全てを把握している私の他に、全てではないもののそれなりに知っている男は気配を隠すことなく無遠慮に入ってきて無遠慮にそう言った。
 上から降ってきた呑気な声に応える気力もなく、体力回復のために目を閉じたままでいるのは、会話すら億劫だからだ。
 三徹までは何とでもなる。だが、流石に五徹は初めてのことで、記憶が一部曖昧だ。失敗してないことを願っているが、命はあるから問題ないだろう。
 それもこれも、諜報に出ていたタソガレドキに無駄に絡まれ(絶対に嫌がらせだろう)、ドクタケがまた変な思いつきでもしたのか乱きりしんを攫っていたため阻止し(大人しくしておけとタソガレドキ領に置いてきた)、学園へと送る途中で好き勝手トラブルを起こすガキ共……いやいや良い子たちの首根っこを掴んで大人しくしろと怒鳴り(全く反省の色が無い)、学園の正門前にいた小松田に三人をぶん投げ(笑顔でバイバーイと言われても疲労回復効果は無い)、忍たまたちによって遅れたスケジュールを取り戻すために大急ぎで仕事に戻り、徹夜が増えたのだ。
「乱きりしんを助けてくれたときいて来てみたら……珍しく君から臭いがする」
 乱きりしんの担任である土井先生からの言葉は、耳には入ってくるが脳みそに届きつつも深く理解出来なかった。
「水浴びも出来なかったんで」
「……へえ」
 だから、考えることも面倒で、何も考えずに返事をしたため先生の返事に不穏な空気が混ざっていたことに、すぐに気付けなかった。
 疲れきって油断していた私と、疲労もなく実力もある先生と。隙は確実な差となり、ふと気付いた時には、土井先生により両足をがばりと左右に開かれていた。
 視線を下に向けると、土井先生は私の足の間に身をかがめているため、見えているのは手入れされていない黒髪と旋毛だけ。
「――は?」
 すう、と股間に感じる空気の動き。
 すう、はあ。すう、はあ。と、何度か同じことをされて、やっと視覚と脳みそが何をされているのか繋がった。
「はあああああ!?」
「暴れるなよ」
 逃げようとした身体は、腰を掴まれて阻止され、むしろ更に股間に土井先生の鼻先が埋まる。
「利吉くんの匂い、こんな濃いの久々なんだから」
「何やってんですかあんたは!」
「堪能してる」
 すう、とゆっくりと息を吸い込まれていく。当然だが何も反応していない、ぶら下がっているイチモツ、その横に鼻先を突っ込んで。微かに見えた先生の表情は、恍惚としていた。
「――――」
 ドン引き出来たら蹴り飛ばすことも出来るのに、それどころかむしろ、その表情に。
「…………」
 私の反応に、すぐ隣に顔を寄せている先生が気付かないわけもなく。
 視線を上げて目元で笑う男の襟首を掴んで乱暴に引き寄せても、私に罪はないだろう。