片桐の存在感は、長谷川からすると強すぎる。どちらかというと地味に、堅実にと生きてきたため、交わることが殆どなかったのだ。
長谷川とて別に、小中高大と友人はいたし、その中で今でも連絡を取り合う友人もいる。
だが、片桐とは根本的に何かが違うというか。明るい人を指して太陽のようだと言うが、片桐はそれともまた違う。太陽のようだはどちらかといえば三浦のようなキャラを指すだろう。
明るいところと、同時に暗いところを持っていて、その明暗差が人を惹きつけるのかもしれない。
「平凡に生きたい……」
「なんすか長谷川さん、ジジ臭いこと言い出して」
人が多くなればトラブルも起きる。そのことは理解していても、片桐と一緒にいるとその頻度が高い。男女問わず引き付け──この場合、惹き付けのほうが正しいのだろうか──るため、良い意味でも悪い意味でも、何かしらが起こる。
今日も酒を飲んだ直後に走ることとなり、ベンチにぐったりと寄りかかっての本音に、片桐が笑う。
こちらは汗が止まらないというのに、隣の片桐は息切れ一つしていないことが恨めしい。しかし、睨みつける元気すらなく、ただただ呼吸が落ち着くのを待った。
飲み終わって長谷川が会計をしている、ほんの数分の間に酔っ払いグループに絡まれていた。騒がしさに外に出てその中心にいるのが片桐と知った時の驚きといったら。
「お前は結構トラブルメーカーだよな」
「そんなことないと思いますけど」
「たった今のこともう忘れたのか」
顔の良さだけでなく、空気から人の視線を惹きつける片桐。本人にとってはそれが普通のことになっていて、多少人に絡まれてもそれは特別なことではないのだろう。その飄々とした態度もきっと、人を引き寄せる要因だ。
「すげー汗」
俯く長谷川の前髪やこめかみから流れる汗に、片桐の指が触れていく。
「汚いだろ触るなって」
「直幸さんの身体で汚いところなんてないですって。それにいつも舐めてんだし」
あけすけな言葉に、反射的に隣に座る男の太ももを叩き、見上げて睨みつけるが全く堪えていない。
「いいっすねその顔」
怒られたいだの、怒っている顔がみたいだのと言う片桐は、その通りに長谷川が怒るとそれだけで喜ぶのだから、暖簾に腕押しとはこのことかと、虚無感に襲われる時がある。今が正しくそれで、走って体力が減ったこともありそれ以上言葉を重ねるのが面倒になってベンチに凭れかかって空を仰ぎ見た。
「片桐はあれみたいだな」
チカ、と目に入った明るさに目を細めながら指差す先を、片桐が追いかける。
「……外灯?」
「誘蛾灯」
「えー、もうちょっといいもんに例えてくださいよ。ひっでーな」
「だってどうみてもそうだろ」
強烈な光で虫を引き寄せ殺す誘蛾灯、そのものだ。長谷川としてはむしろ遠ざかろうとしたのに、光自ら寄ってこられたと、そんな状態だと自虐する。もちろん、近寄られて、それを受け入れたのは長谷川なのだけど。
「俺にとって直幸さんもそんなですよ。見つけたら一直線ですから」
「……言ってろ」
珍しく裏も表もなさそうな口説き文句に、逆に恥ずかしくなって悪態をつくが、片桐は長谷川の赤くなった耳を撫でて楽しげに笑った。
光は両方向