同期で、神谷がこうなのを知っているのは梶と宮川だけだ。若手の頃は共と勉強会だのと称して夜の店に連れて行かれることがあった。それが苦痛で、けれど上司や先輩からの誘いを断ることなど出来ないと、張り付いた笑顔で時がすぎるのを待っていた。
そんな神谷に気付いてくれたのが梶と宮川で、そんな二人に嘘をつくのが忍びなく。同時にこの二人ならば言ったところで問題ないだろうと、それくらいの信頼関係は築けていた。
それくらいと言える自分に、新鮮さを感じたけれど。実際二人は神谷からの言葉をほとんど流すように受け入れ、以降一緒にいるときは上手くそういう誘いを逸らせるようにしてくれた。
そうやって受け入れるのでも過剰反応するのでもなく、当然とされるのは初めてのことで面映ゆくあった。
競争心の強い銀行員。
特に同期相手になると、それが顕著になるせいで、付き合いが表面的になるのだが、梶と宮川はいい意味でマイペースな性格のせいか、神谷共々どちらかというと同期の中では浮いていた。それ故に自然と三人でつるむことが多く、信頼の下地が築かれたという塩梅。
不思議なものだ、と思う。
大学時代までには深い付き合いをするような友人はおらず、一生ないものと思っていたものが、仕事を始めたら出来たのだから。
この二人なら大丈夫、という無条件の信用は、過去の神谷が持っていなかったもの。
同条件であった二人が、しかし一人は友人のままで、もう一人は、
「こうなってる、と」
「?」
一緒の布団に包まること、それを当然と出来る関係。
隣にいる梶は、突然の神谷の声に疑問符をぶつけてくるが、何でも無いという代わりに半身を梶の上に乗せるように被さって唇を合わせた。触れ合うそこは、先程までの熱はもうない。かわりに触れ合うことから来る安堵を得て、十分を貰ってから離れた。
「ちょっと違ったら、ここにいるのは梶じゃなくて宮川だったのか、と考えてた」
神谷の言葉に、判りやすく眉間にしわを寄せる男を見て、気分を良くする。とはいえ、梶の機嫌を損ねたいわけではないので、言葉を重ねた。
「とはいえ、宮川は俺のタイプじゃないしないな」
「……信用七掛け案件か」
「素直に取れって」
むすっとしながらも、神谷を抱き込む腕の力が強い。
その強さが神谷にとっては幸いなのだと、梶が知っていることを神谷は知っている。だから大人しく囲われた。
「俺だからな」
「判ってるって」
神谷の即答に機嫌を直すのだから有り難い、そう思いながら髭が生えるざらりとした頬を楽しむように、頬を近づけた。
運命の悪戯