どうしてこうなった、という顔で固まる長谷川をじっくりと眺める。
眉が下がって視線が彷徨いているし、身体を引こうとしては留まり、けれど一定の場所から前には来ることが出来ない。
勢いでがっと出来る時はあれど、普段は理性的な分、一度考えてしまったら止まってしまう。そこがこの人の面白くて、面倒なところだ。
「長谷川さん、別に咥えてって言ってんじゃないですから」
「……似たようなもんだろ」
「全然違いますよ。つーか触ったことあるんだから、そんな緊張しなくても」
「…………」
大丈夫なわけないと雄弁に語る長谷川、その頬を撫でる。
クイズ番組で、解答が出る前にそれぞれ答えて正解が少ないほうが罰ゲーム、という勝負が気付いたらなされていたのは、長谷川の実家が送ってきた沖縄土産の泡盛が進んでいたせいだろう。三連休の初日というのもまずかった。
酔っ払っていてもそれなりに働いた頭は、片桐の勝利で終わった。少々裏の手というかちょっとした小細工というか、まあそういうのは内緒で結果だけを見たら片桐の勝利。
それぞれ水を飲んで体内のアルコールを少々薄めて、ではということで告げた罰ゲームは、片桐からしたら簡単で、長谷川からしたら難しいものだ。
初手として、片桐のものを手でする。ただし、片桐の足の間に座った上で。
すでに数え切れないほど――別に元々数えてないが――セックスはしているのだが、どうにも照れや戸惑いが長谷川から消えないので、ここらで少し強引に進めてもいいのではないかと思っての提案だ。隙があったらぶっかけようという邪な思いは当然ある。だが、そうするためにはまず握ってもらわなければ。
「直幸さんが脱がせてくれます? それともそこまでは俺がやりますか?」
やらないという選択肢を取らないが故に、長谷川はソファに座る片桐の足の間に居続ける。あまり追い詰めすぎると、現在取っているやらないという選択肢を反故にされかねないと思い問いかけると、長谷川は視線を彷徨かせた後息を吐いた。
「……頼む」
「はい」
触れる肌はじわりと汗が浮かんでいるし、随分と熱い。アルコールで上がっただけではなく、羞恥が入っているのだろう。その姿を見て思うのは、
「あー、ぶっかけたい」
「――……」
「その顔いいですね。たまにしか見えないのでレア度高めで」
ドン引いている長谷川を見てそう笑うと、身体まで引いていく。そんな長谷川の後頭部を包むように戻しながらしまったと思った。
やはりアルコールは口を軽くする。結構飲んだなとテーブルの上にある泡盛の瓶を見るとほぼ空。まあそういう時もある。
「さて」
スラックスの前を寛げ、下着の中に手を突っ込むとここもかなり熱が籠もっており、外に出すと冷えた空気を直に感じた。一気に表面体温が奪われていく感覚というのは、三十年男やっていても少し慣れない。露出狂だとこの感覚が快感なんだろうなと思うばかりだ。
自分を見せたいのではなく、長谷川自身を見せびらかして自慢したいというのは露出狂ではないのでセーフ。今は二人きりなので、遠慮せずに股間を露出させた。
「咥えてくれてもいいですからね」
笑って言えば、長谷川は無言で手を伸ばしてくる。高揚を感じながら、そんな姿を上から見下ろした。
滑らせるというよりは包むように握って強弱をつける。傷つけぬようにという配慮なのか、力は弱くて擽ったい。
始めてしまえば覚悟もつくのか、左手で支えながら右手が柔く包んだまま前後すると、視覚効果も相まって高まりを感じる。しかし同時に、血液が全身を巡っているせいで集中しない感覚もある。
「泡盛……」
呟くと、長谷川が上目遣いでこちらを見る。いつもと角度が違うと印象が変わって少し幼く感じるのは、前髪のせいだろうか。両手でその前髪を梳くように指を通すと、長谷川が少しだけ目を細めた。
「これ、今日は無理だろ」
持ち上げたまま幾度か擦られるが、反応が鈍い。
高揚はある、何せ目の前には見ているだけで襲いたくなる長谷川がいて、自ら握ってくれているという状況があるのだ。だというのに息子は愚息になっていて、起きる気配がない。この状況でまさかの長谷川と同じ状況に陥るとは。
「お前今失礼なこと考えてるだろ」
長谷川が怒ることは考えていたが、それは口に出さずに本題に戻す。
「明日に持ち越しませんか?」
「却下。俺はやった、たたないのはお前の都合だからクリアだろ」
「そんなぁ」
手を離してスラックスの中に仕舞ってくれるのは新鮮だが、そうじゃない。
「泡盛め……!」
憤ったところでどうすることも出来ず。ほぼ空の瓶を睨む片桐に、長谷川は苦笑しこちらの太腿に手を置いて伸び上がってきた。
「飲みすぎると碌なことにならないって、判っただろ」
熱が触れ合い、数秒。体勢を戻した長谷川は、顔を赤くしたままそう言って笑った。
罰ゲーム