良いんですか、と問われたことに返答はしない。一度言ったことを何度も繰り返す必要はないからだ。そんな片桐の態度に笑う三浦の態度にかなりイラッとしたため蹴りを一つ。
「いった! ひっでーなぁ、もー」
「うるせえよ」
きゃんきゃんと犬のように吠える三浦から顔を逸らすが、吠えている本人は止まらない。
「片桐さんって、本当に長谷川さんが好きなんですか?」
「あ?」
「だって、こんな賭けの対象にしちゃうとか。長谷川さんかーわいそー」
三浦と金を使ってのベットは、金が欲しいというのも有ると言えば有るがそれだけではない。ただ、それを言ったらやっぱやめたと言われかねないため口にしない。全部を明かす公平性など持ち合わせていないのだから、後からこいつが気付いたところで笑い飛ばすだけだ。
「長谷川さん、弱ったところ見せつつも押したら結構簡単にいけそうですよね! 俺が勝っちゃったらすみません」
すでに勝った気でいる三浦は、かなり本気で同情するが、敵に塩を送るつもりもないので挨拶も何もせず踵を返した。まだ就業中で、席に戻れば長谷川がいて三浦を相手にしたことで得たストレスは浄化出来るだろう。流石長谷川さん。
長谷川が押しに弱かったら、片桐はこんなに苦労していない。あの元彼女の浮気が発覚したラブホでとっととヤれているだろうし、あそこで無理でも今までの間で出来ていただろう。それが判っていない三浦は、正直に言えばこれっぽっちも敵ではない。
三浦の存在は、言うならば荒療治の一発、状況を無理矢理動かすためのものだ。
常識というもので動けなくなり、同時に片桐に対してきちんと情を持っているが故に引いてしまう長谷川を動かす起爆剤。三浦を排除するのは簡単だが、それだと無駄に希望を抱かせてしまう可能性がある。それは今後において邪魔だ。
故に、思ったのだ。
一度判りやすく長谷川に拒絶され、同時に片桐と長谷川がくっつけば、三浦も大人しくなるだろうと。お互いを盛り上げるためのスパイスになるのならいいが、三浦の存在は大体マイナスに動き、ストレスとなっている。ここらで退場してもらうのもいいだろう。
上手くやるには片桐もそれなりに動かなければならないが、長谷川とヤるためなら苦ではない。
さて、どうしようか。
仕事をしている長谷川を眺め、その背中から尻のラインを目に焼き付けつつ頭の片隅で最初の一手を思考した。
罠とは一方的である