フロントで、宿泊人数の変更手続きを行う梶から離れてフロントに背を向けた。元の部屋はダブルということで、制度的には何の問題もないもののやはり気後れしてしまう。
「神谷、行くぞ」
そんな神谷とは正反対に、いつも通りに見える梶は神谷に一言かけてエレベーターのボタンを押した。一階にいた箱は、すぐにドアを開ける。
六人も乗れば一杯になる小さなエレベーター。動き出したと同時に、左手が熱に包まれた。
「……梶」
「嫌なら解いていい」
そう言いながらも、離す気などないというように力が込められた。
「……嫌じゃないけど、困る……」
握り返すことも、解くことも出来ずに素直にそう言えば、隣に立つ梶が神谷の顔を覗き込んできた。
「……何だよ」
「煽るな」
煽ってない、と反論するより先にエレベーターが止まり、腕を引っ張られそのまま部屋へと連れ込まれる。
寝ていろと電話で言ったのに、結局ひとつも乱れていないベッド。その足元に鞄を置いたあとに梶と視線を合わせると、腕の中に囲われ唇が塞がれた。
すぐに絡まる舌は、唾液で滑る。それを楽しむ余裕もなく、深く噛み合わせながらジャケットを脱いで鞄の上に放り投げた。シャツを脱ぐのすらもどかしい。だが、着替えがないのだという最後の理性が、行為に耽けようとする本能にブレーキをかけた。
梶の両頬に手を添えて唇を離す。は、と漏れた吐息はどちらのものだったか判らぬまま、一歩下がった。
「神谷」
「お前も脱げよ」
そう言って、自らシャツのボタンに指をかけた。
●
肌に浮いた汗を、梶の舌が拭っていく。そのまま鎖骨を甘噛みされるとひくりと身体が反応した。淡くずっと達しているような感覚が止まらない。身体の奥が緩み、熱が溜まっていく。
「……っ、ぁ」
身体を起こした梶が交わりを深くした。泥濘むその場所は、何の抵抗もなく受け止める。ゆっくりと出入りする陰茎は、だからこそ形が判りやすい。初めてではないのに、今までよりも緩やかな動きだというのに、疼痛が止まず気持ちがいい。
「ぅ、あ……ぁ、」
痙攣する下腹部を梶の掌が撫で、そのまま雫を流す陰茎に触れた。腰の動きと合わせて擦られると、先端から先走りが流れ落ちた。
「は……すげえな」
「っ」
梶の声に首を振るが、自分自身でも身体が暴走していることが判るためなんの説得力もない。
今まで意図的に内部を締め付け、自分の身体を使って一方的に主導権を握ることが多かった。なのに、梶相手にはそれがほとんど出来ないし、今のこの状態は論外だ。
「も、すぐいくから、触るな」
「だから触るんだろ」
上から余すこと無く見下される。その視線に籠もる熱に肌が焼ける気がして顔を背けると、強く陰茎を擦られた。
「あ――ッ、ひ、ぁ」
ぐ、と奥を突かれ、捏ねられる。その陰茎を締め付ける動きは無意識で、離そうとしない。
「梶……」
両腕を伸ばして熱い身体を引き寄せながら、両足を梶の腰骨に乗せるように深く噛み合わせた。梶は、そんな神谷の背中と腰に腕を回し密着してきた。
「……ん」
近くなった距離の分唇を合わせ、離れて額をくっつける。メガネをしていない視界は、これだけ近ければ問題なく梶の顔を確認することが出来る。汗が浮かび、前髪が張り付く梶の額に触れる。
「気持ち良すぎて怖えな」
「そうだな」
梶の声に頷く。たかがセックス、気持ちひとつでこうも変わるとは思わなかった。
けれど、今日くらいはこの流れに身を任せてもいいだろう。
このぐずぐずになっている身体を、梶はすべて受け止めてくれる。
だからと理性を意図的に崩すように、梶の唇にかじりついた。
乱れる肢体