誰がいつ突然扉を開けるかも判らない、そんな場所で身体を暴かれるということは、恐怖と羞恥が入り交じる。
勿論、斉藤課長の執務室を応えより前に開ける生活安全課の人間はいないが、そうでない他部署の斉藤よりも上の立場の者が開けないという保証はどこにもない。
もしそんなことになったら、斉藤も、矢島も、どうなるか。それが判らぬ男ではないはずなのに、斉藤は毎日矢島を抱くのだ。
初めての時は全てが訳が分からず、流されるままに声を上げ達して翻弄されていた。それでも、毎日のように同じことをされていれば、慣れのようなものが来る。
つまり──自分を客観視出来るようになるのだ。
組み敷かれている事実と、その上で好きに啼かされている現実。場所と時間、外の気配。それらを感じ取り襲ってくるのは、莫大な羞恥。
「……ッ、ぁ、っ」
後ろから容赦なく、熱く太いものが内壁を梳り突かれる。それが気持ちの良いことだとこの短期間で教えられ覚え込まされた結果、全身の制御を無くすほどの悦が駆け巡ることになった。先週は知らなかったことだというのに。
浅い場所を往復したかと思うと奥を捏ね、ゆっくりと引き出されていく。
擦られる内壁から上がってくる感覚に背中を丸め、唇を噛む。
「~~……っ」
俯く顔、流れ落ちる涙がソファに跡をつけた。飽和した熱がそうして発散されるのを見ながら、耳は背後にいる斉藤の声を拾った。
「我慢せず声を出せ」
伸びてきた長い指が、噛みしめる唇を撫でていく。その柔い感触に綻びそうになるが、必死に力を込める。斉藤は、そこを撫でながら、腰を進め密着を強くした。深い場所に触れられると、内蔵を直接触れられている恐怖を思ってしまい、拒絶するようにその熱を締め付け排除しようとする。結果、その状態で動かれると、
「ひっ、ァ、」
背中には重たい身体があり、逃げ場なく悦を受け止めることとなる。
微かに綻んだ隙間をこじ開けるように、斉藤の指が腔内に入ってきた。親指と小指で顎を挟み、人差指と中指が歯の隙間から舌に触れる。微かに感じる苦味は、煙草のもの。
舌を爪先が引っ掻き、同時に身体の奥を揺さぶられると、芯が溶けるような感覚が来る。全身を抑え込まれ逃げられない。
「あぁ……ッふ、ぁ」
口に力を込めると肉の感触が生々しく、反射的に力を抜いてしまう。そうすれば斉藤の思うつぼとばかりに声が漏れる。その自分の声があまりにもだらしなくて、聞いていたくない。嫌だ、と首を微かに振るとその動きを感知した男が、矢島の耳の裏に顔を寄せた。
「どうした?」
……そこで喋るな!
自分の使い方を知っている動きに悪態が脳裏に浮かぶが、人の腔内を好き勝手弄る指があり、言葉にはならない。
答えない矢島をどう見たのか、微かに笑った男はくっついた肌をそのままに、奥を再び揺さぶってきた。目の前がチカチカとする快楽に喉をそらすと、唾液が顎を伝った。
息苦しくて、吐き出したいし、解放したい。
縋るように、斉藤の手首を掴んだのは無意識だ。口の中から抜かれる指と唇に繋がる糸はすぐに切れる。それを気にすることなく、斉藤は矢島の身体を抱き込みながら身体を起こした。腰を支えられ、片足がソファから落ちるが四つん這い。苦しさは無くなったが自分がどんな姿を晒しているか判ってしまって身体に力が入った。
「可愛い反応をする」
「うっぜ……っ」
可愛くなどない。どう見ても目と脳みそが狂っている言葉を返す課長を肩越しに睨みつけるが、楽しげに見下されるばかりだ。
「まだ余裕がありそうだから、長く楽しめるな? 矢島」
「ア──!」
言うなり、強く突かれ声が出た。ふざけるなと悪態も付けず、思考はすぐに快楽の波に攫われた。
密度高い触れ合い