朝涼

061:流

「……ん、ぅ」
 顎が疲れた、息がしづらい。噛み切ってやりてえと思いながら咥内にある塊に舌を添わせた。
 丸ノ内署で押し切られることに慣れている自分が嫌になるが、これは明らかに斉藤課長時代に毎日毎日好き勝手されたせいだ。そのせいで未だに課長室に入ると身体がおかしくなる。
 会議室は、皆がいる部屋からさほど離れていないし、特別室ほど壁も扉も分厚いわけではない。そんなところで最後までされてたまるかと抵抗した結果。
「なら今はここで勘弁してやる」
 と唇を撫でられ、何故か斉藤が妥協してやったという態で咥えることになった。何でだ。色々と言いたいことはあるが、ここで最後までされるよりは一発抜いてやったほうが早い……はずだ。最近の状況を見るに自信がないが。
 机に軽く腰掛けた斉藤の前にしゃがみこんで、最低限だけ露出させて咥える。
 流れる唾液や先走りで服を汚さぬように、基本ずっと口の中に収めたままのせいで顎がだるい。
 それでも、達かせたら終わると舌を押し付けたまま顔を前後した。上顎と舌側で包み込み、軽く吸いながら刺激を与えていく。鼻からゆっくりと息を吐き目を瞑ってから喉を開けて先端をそこに通した。停滞する異物に身体の反射がそれを締め付けるに任せ、ずしりと重たい陰嚢を掌で転がし揉む。ひくりと咥内で蠢く熱、喉奥で締め付けながら溢れそうな唾液を飲み込んだ。
 矢島の短い髪に指を通す斉藤の指に、時折力が籠もる。
「――……っ」
 じゅ、と強く吸いながら顔を引いたあと、先端に舌を押し付けぐりぐりと舐めると斉藤が息を飲んだ。
 上目遣いで男と視線を合わせながら顔を前後させ、咥内に含めない場所は指で包んで擦り射精を促す。びくびくと跳ねる熱を慰めると、熱い飛沫が咥内を満たした。動きを止め喉の奥に通していく。少し余裕が出来た後にこぼさぬように唇をすぼめながら熱を引き抜き、液体だけになった後、こぼさぬように上を向いたまま、口元を抑えて改めて飲み込んだ。
「は……」
 そんな矢島の姿を上から見下ろす斉藤の視線は強い。咥内が空っぽになるまで逸らすことが出来ずにいた。
「多い」
 何度かに分けて飲み込み、最初に出た文句はそれだった。何度か咥えたことがあるし、飲んだことはあるが毎回思う。
「少なかったらお前が満足しないだろうが」
「そんなこと」
 ない、と言う途中でふと言葉を切って矢島は俯き口を抑えた。そうしながら、咥内の残滓を舌で転がした後にそれを飲み込む。
「どうした」
「味変わるって本当なんだな……って、なんでもないです……」
 思わず口走ったことが矢島にとって都合の悪いことであると気が付き、青ざめながら言葉を変えた。だが、当然そんなものに何の意味もなく。斉藤に顎を掴まれ上を向かされた。
「それはそれは」
 ……あ、やべえスイッチいれた。
 瞳孔が開いた笑みは、捕食者のそれ。
「禁煙成功をお前も喜んでくれているようで嬉しい限りだ」
「喜んでねえよ! あと何でまた勃たせてんだ!」
 眼前にあるものは、またも頭を擡げ形を変え始めていて、その復活の早さに思わず叫んだ。
「お前が誘ったんだろ」
 数日前にも言われたことを口にされ、しかし今回は自分の失言に原因の一端があると自覚があるだけに、何も言い返せずに斉藤を睨みつけた。
「上か下、お前の好きな方を選べ」
 その視線を受けながらも男は笑い、矢島の口の中で指を遊ばせながらそう言った。

流し込む