「あ、起きました?」
ぬるま湯のような温かさに包まれながらの意識の浮上は、眠気までも連れてくる。だが、耳に届いた声があまりに近くて眠気よりも驚きが先立って、明るくなった視界に声の主を映した。
「……片桐?」
「? 俺ですね。どうしました?」
「もしかして俺寝坊した?」
いつもは長谷川のほうが早く起きているため、先に目が覚めている片桐、という状況が理解出来ずに間抜けな声を出してしまった。とくに休日は、放っておくとずっとベッドの上で過ごそうとするため、起き上がらせるのが大変だというのに。
「昨日少し無理させちゃいましたからね。身体大丈夫ですか?」
パジャマの裾の空気が動いたかと思えば、すり、と腰を撫でられ肌がひくりと震え。同時に夜中のあれこれを思い出して、残っていた眠気が全部飛んで顔に血が集まった。
泣きながらいきたいと懇願した長谷川に、今日はここに入りたいと下腹をゆっくりと撫でられ、それが何を意味するのか考えるよりも先にいいからいかせてほしいと言ってしまったが故に、ソコ、に片桐の硬いものが当てられて。まるで自分の中が全部一度崩れて再構築されるかのような、そんな衝撃と苦痛なのか快楽なのか判らないけれど、自分が自分でなくなるような恐怖から必死に片桐にしがみついて。そんな長谷川を抱きしめて大丈夫だと言いながらも何度も、ゆっくり出入りして――。
「……っ」
「だいぶ慣れてきたとはいえ、今日はちょっとつらいはずなんでゆっくりしましょ」
昨日のことなど無かったかのように笑う片桐の顔を見ていられなくて、掌で片桐の顔を押して離れる。
「いたた、なんですか直幸さん」
「ひ、ひとりになりたい……」
思い切り押しても、片桐の身体は離れていかない。それどころか、抵抗する腕を取られて引っ張られ先程よりも距離が近付いた。雰囲気があからさまに明るいというか、これは……
「何でそんなに嬉しそうなんだよ、お前は」
「そりゃあ新しい直幸さんを見つけたら、嬉しくもなるってもんでしょ。お陰で目が覚めちゃいましたよ」
「言うな……!」
血が集まって熱くなった頬を、片桐の唇が滑っていく。ちゅ、ちゅ、と音を軽くさせながら何度も口付けられ、仕方無しに抵抗を諦めた。
「休日ですし、午前中くらいはこのままゆっくりしましょう」
腰を引き寄せられ、温かい片桐の体温に包まれる。表情を隠すために鎖骨に鼻を埋めるように伏せ、目を瞑ると昨日しがみついた時の匂いと腕の強さを思い出してしまう。うう、と小さく唸る長谷川に気付いているのかいないのか、片桐は長谷川を抱きしめたまま身体から力を抜き、寝に入った。
締まりの無い顔