朝涼

080:夜

 酒を飲むと大胆になるのは変わらず。それでも、桜が咲いていた頃とは関係が変わったこともあり落ち着いていたところもあった。日常の中の一環で触れ合うことに気恥ずかしさと嬉しさが混ざって、二人で笑い合う。忙しい中でそれでも好きな人と一緒にいられる日常を噛み締めている。
 ――の、だけれど。
 酒が入ると箍が外れるのは、白石のほうだ。酒がないと恥じらいが強く黒崎が主導となるのに、アルコールが体内に入ると恥じらいながらも大胆になるのだ。
 久々に見る光景に、つい視線をそらせない。ソファに座る黒崎の前、床に座り込んで黒崎の股間に顔を埋める白石の姿。俯かれてしまうと感情が一番出る瞳が見えなくなってしまうのが残念。だから代わりに色素の薄い長い髪に指を通すと、黒崎のものとは違ってしなやかで柔らかいことが判った。
 柔らかく、熱い咥内で育てられる熱は、少しだけもどかしい。もっと強くと思う気持ちが、白石の髪を弄る指に現れるのを自覚しながら、その気持ちを落ち着かせるように息を吐いた。
 白石は口の中から陰茎を引き出し、そのまま唇で横から食む。血管を淡く潰されながら、指は鈴口を擦った。
「……っ」
「気持ちくないですか?」
 黒崎を見上げてきた瞳に不安が広がっていた。黒崎に奉仕しようとする白石は常にそうで、アルコールが入るとそれが顕著になる。その揺れる瞳はキレイだと思うけれど、内容は頂けない。白石の両脇に腕を入れて持ち上げると、意図を察した白石が立ち上がってくれる。その身体を引き寄せ、黒崎の身体を跨がせるようにソファに膝立ちになってもらった。
「あ、あの? 黒崎さん……っ?」
 ちょうど目の前に白石の股間。指でジーパンのホックを外すと、真上から焦った声。それを無視して前を寛げ、少しだけ反応しているそこを、先程までの白石と同じように咥えた。
 白石が息をつまらせながらも、黒崎の肩とソファの背に掌を置いて身体を安定させる気配を感じながら、咥内に収めたそれに舌を這わせた。
 熱と匂いが籠もる場所。去年までなら、自分が同性のここを舐めることも、舐められることにもなるなんて考えてもいなかった。最初に白石にされた時は驚きと気持ちよさで混乱して、けれど嫌悪はなく。思考のすれ違いのせいで、黒崎があれこれしようとするのは拒否されて不思議に思ってもいたけれど、今はそれも解消されている。
 だというのに、白石はまだ黒崎に対して遠慮がある。
 その壁を取り払うには、結局のところ時間と慣れが必要――と、会話をして理解はしていてもアルコールで理性が緩むとそれをもどかしく感じるのも事実。少し強引にこうするのも、その一環だと言い訳をしながら、唇で挟んだそれを吸う。
「ん……っ」
 抱いていた腰を撫で、ジーパンを膝まで落とし太腿を撫でるとアルコールで汗ばんだ肌が震えるのを感じた。上手く動かない舌を動かし、顔を前後させながら吸ってから軽く噛む。
 身体に力が入るくびれを舌でくじくと、肩を掴む指に力がこもった。白石は、ここが好きだと慣れない愛撫の中で学習していく。
「……っ、ぅ」
 少し前なら考えもしなかった行為で、愛撫しながら自分の身体も熱くなる不思議。けれどそれは悪い気持ちではない。
「――……白石君」
 唾液が口の端から流れたため、一度離して口元を拭う。
 同時に、太腿に触れていた指を動かし、つるりとした尻を撫でた。
「……この体勢は、つらいです」
 意図をきちんと察してくれた白石は、目元を染めながらそれでも願望を口にする。こちらに奉仕しようとする遠慮と、身体を預けてくれる信頼。反する二つは、白石の奥ゆかしさと大胆さの現れで、もどかしく感じる時もあるけれど無下に出来るものではない。
 少しずつ妥協点を探っていくしかないと思いながら、場所を移動するため二人連れ立って立ち上がった。

夜に溺れる