朝涼

084:園

 普段、野球になんてまったく興味を示していないのに――ちなみにスマホで野球ゲームをやっていることは知っている――、やはり母校のことならば嬉しいのか加藤が高校野球のニュースを楽しそうに見ている。
 一〇七年ぶりなんて、それだけ歴史があるというのも凄いことだろう。何時代だと計算して大正時代と頭がはじき出し、さすがに驚いた。スマホで歴代優勝校を見たら、第二回の優勝校だった。そこから一〇七年。一〇五回大会まで優勝なしときたら、それは大盛りあがりだろう。ついでに仕入れた知識として大会回数のほうが少ないのは大戦があった四年間中断されており、再開時に続き連番で始めたかららしい。
「やっぱ嬉しいもん?」
「一学期の終わり頃から地方大会で盛り上がるから、そりゃな。まあけど俺の時には甲子園行けなかったから応援には行ってないんだけど」
「へえ……」
 さすが金持ち高校、と言うのはあまりにも僻みだと思って喉奥に仕舞い込む。そういえば今年はOB達も揃ってアルプススタンドどころか、内野席まで占拠していたとニュースになっていたことを思い出す。
「優勝したんだから奢ってくれよ元塾生」
「何で」
「優勝したんだから、パーッと奢ってくれてもいいだろ」
「……まあいいけど」
 松田の満面の笑みにつられたのならチョロいが、奢ってくれるというのだから松田としても悪いことはない。
 善は急げとテレビを消して立ち上がると、加藤もまんざらではなさそうな顔をして立ち上がった。
「デザートも欲しい」
「? お前が金出すんだろ。好きにしろよ」
「そうじゃなくて」
 加藤が、松田の背中を指先でするりと上から下に滑らせた。息を呑み、身体を震わせる。
「……っ、てめ」
「デザート、楽しみにしてる」
 にやけた顔をして言う加藤にかなり苛ついて、膝を蹴り飛ばした。

夏の甲子