腹の上に出された片桐の精は、空気に触れて冷たくなっていく。下手に動くとシーツにこぼれていきそうで動けないため、寝転んだまま息を整えそのさなかになんとなくその精に触れた。もう温くなっているこれは、こんなところで無駄撃ちさせるのは勿体ないのではないだろうか、とふと頭に浮かんだ。
実際のところ、片桐が結婚に対してどれだけの願望を持っているのか、長谷川は知らない。知ったところで、どうにもならない話題だから触れたことがない。
指輪買いに行きましょうか、や、一緒に実家に、などと言われたところで、言葉が軽すぎて本気だとも思えないのも事実。片桐だしなぁと思ってしまうのは、過去の積み重ねのせいでしかない。
「俺が出したもんいじってんのってえろいですね」
「……はあ?」
汗の引かない肌をそのままに、前髪をかきあげた片桐は左手で長谷川の下腹部に触れた。ぬるりと広がる感触に眉をひそめるが、片桐はそれを見て笑うばかりだ。長谷川の指を捕まえて、腹の上で精をかき混ぜながら誘導する先は、長谷川の少しだけ固くなったままの陰茎で。
「……っ」
長谷川の指ごと包み込み、軽く擦ると濡れた掌と空気が混ざって小さく音が鳴った。たちあがるほどの硬度はなくとも、少し前よりは確実に血液が集まるようになってきたここを、片桐は毎回弄るし舐める。
「ぁ、あ……」
もうあと一月ほどで一年になるのだから、出す感覚はすでに遠くなっている。それでも触れられたら気持ちがいいし、腰が重たくなる。片桐の指の腹が、先端をゆるく弄ると、腰が浮いていく。そうして出来た隙間に、片桐の膝が入り込み逃げ場を無くした後に右手が奥に入り込んできた。
まだ柔らかなそこは、なんの抵抗もなく長い指二本を飲み込んでいく。
「――っ」
「もう一回良いですよね?」
中で広げられる感覚に息を詰めるが、片桐は気にすることなく中で指を蠢かす。つい数分前まで刺激されていた内壁はまだ敏感で、指であっても感じ取ってしまう。
前立腺を体内から押され、同時に外から幹を擦られて。一人では吐き出せない熱が溜まっていく。腰を捩って逃げようとしても、片桐の指から逃げることなど出来なくて、シーツを引っ掻いた。
目の前で楽しそうに笑う男が憎たらしいのと同時に、男相手に二度も求めることが信じられない気持ちもあって。片桐に抱いてほしい女性など、いくらでもいるだろうに、今この男が抱いているのは七つも年上の中年男。そのことが不思議でたまらない。
「ん……ッ」
ずるりと引き抜かれた指の代わりに入ってくる、片桐の陰茎。それはつまり、また無駄にされる命の源があるという現実がふと頭によぎった。
一人では熱を慰めることが出来ないくらいに後戻りという選択肢をなくした長谷川と違って、片桐は結婚して子をなすことだって出来るのに。
自ら長谷川を選ぶ男に対して、申し訳無さよりも嬉しさと優越感を感じてしまう長谷川の本音は、そっと胸にしまって片桐に与えられる悦を受け止め溺れた。
儚く散るいのちのかけら