朝涼

094:腕

 松田は、セックスでいつも感じやすい。
 涙目で、口の端から唾液が流れて、舌っ足らずに加藤の名を呼ばれると欲情が止まらなくなり、その本能のままに従って更に啼かせてしまう。バカという罵詈雑言すら、甘い睦言だ。
 正直、松田が女を抱いていた時どんなだったのか、実は気になっている。さすがにこんなぐずぐずではなかったのだろうけれど、全く想像出来ない。もう二度と、松田が女を抱くことはないのだから、いいんだけど。
「ひ……ッ、ぁ、もぉ、や……!」
 シーツに爪を立て、後ずさって距離を取ろうとする松田の腰を掴んで引き寄せる。ぐち、と結合部から濁った水音をさせながら、抽挿を繰り返すと、松田の甘い声が途切れず耳に届き続けた。
「んん……――っ」
 松田が身体を丸め、内壁を痙攣させながら達する。その締め付けに逆らうように耐えて、身体が緩んだところを見計らってもう一度奥を突いた。ひくひくと細かく痙攣する内部が気持ちいい。出したい気持ちと、まだ終わりたくなという気持ちのせめぎあい。
「かと、も、いったばっかっ……!」
「もうちょっと、だけ」
 シーツに沈む松田が、加藤の肘近くを掴んで止めようとする。それをそのままに、ぐりぐりと腰を押し付けると視界の中にある下腹部が細かく痙攣しているのが判った。きっと、ずっといきっぱなしになっている。実際、内壁はずっと加藤の熱を離そうとしない――と、思うのは願望が入りすぎだろうか。
「んぅ、っ、ぁ……は……、あ、あ」
 ……えっろ。
 溶けた声と加藤を受け止める身体。ずっと見ていたい気持ちと、もっと汚したくなる気持ち。ぐちゃぐちゃの理性と本能のまま奥の狭まった場所を刺激すると、松田の指が加藤の皮膚を引っ掻いていく。力加減がバカになっているからか、かなり痛い。
「――ッ」
 それを振り払うのではなく、松田の背中に腕をまわしてのしかかるように身体を倒すと、松田の指も自然とそこから離れた。それでも、背中に腕を回すのではなく加藤の二の腕を掴んでくるのだから、そこへの傷も覚悟しながら止まった抽挿を再開する。
「ん、あー……、っ」
「ん……」
 耳の横で甘い声が響く。その声が加藤の理性を溶かしていく。
 ばかみたいに腰を振って、啼く松田の声に煽られて。目の前の身体を貪ることしか考えられなくて、縋り付き、立てられた爪の痛さすら段々と気にならなくなっていく。
「松田、まつだ。すきだ。……松田」
「、るさ……っ、ぁ、あ゛!」
 汗の流れる首筋から頬に口付け、張り付いた髪の毛を舌で食む。顔を背けて逃げる顔を追いかけて、唇を触れ合わせた。
 熱い咥内の中にある舌に触れると、松田から絡みついてくるのが嬉しい。
 粘膜を触れ合わせる気持ちよさに酔いながら、腰を引いて松田が感じる場所を緩く突き上げると、松田が強請るように足で加藤の足を蹴った。口は素直じゃなくても、こうした行動ひとつひとつが素直で、そのギャップがたまらないのだと、毎回思う。
「かと、も終われって……ぇ、」
「ん……」
 ガリ、と音がするほど強く二の腕を引っ掻かれ、流石に痛みに顔を顰め。けれど、そうして縋りついてくれること自体は嬉しいと思うのだから、やめないでほしい。
 そう思いながら我慢せず、中を汚していった。

勲章残る