梶の性癖は、ノーマル。元々ストレートだし、女性とでもごく普通のセックスをしていた、のだろう。神谷に対してもアブノーマルなことはしないし、それを軽く提案しても唆られた様子は見られない。
体位については色々と協力的だが、緊縛も、露出も、剃毛も、コスプレも、SMも、鏡も、その他色々と。AVじゃねえんだから、と一蹴されてしまえばそれまでだ。神谷としても別にそれらが好きなわけではないので、やらないのならそれに越したことはない。そもそも、梶とのセックスでそんな別刺激がほしいと思うほどの不満もないのだけれども。
だが、梶は時折どこからか変な知識を仕入れてきて、神谷に対して行おうとする。駄目か、と聞かれると駄目だと言いにくいそんなものを。
撫でられる、という行為は実際のところあまり慣れていない。
元々性欲が発散出来ればよかったし、それだけの行為で前戯をしっかりとなんてことは殆どない。触れられてもせいぜい首と乳首、腰くらいだろう。だから梶とする時、全身をじっくりと撫でられ噛まれ、舐められることに対して抵抗して逃げようとしてしまう。
それを全身で押し止められ、神谷がぐずぐずになるまで続けられる。
「いやだ、梶……やだ」
懇願は、しかし随分と甘い声で、自分でもこの否定は何の意味もないことが判っているし、梶もそれが判っているからやめてくれない。
膝にかり、と軽く歯を立てられ腰が少し浮く。慰めるように熱い掌がそこを撫でながら、梶の身体は更に下へ。汗で冷えた脹脛をゆっくりとマッサージするように撫でられ、足首に舌が這った。
「……っふ」
息を詰めるが、梶の舌は止まらずくるぶしの尖った骨の上を這う。根本部分をゆるりと擦り、唇で挟んで軽く吸った。足を持ち上げられているせいで、視界でも触覚でも梶が何をしているのかが判って、けれど目をそらせない。梶も梶で、神谷から視線を逸らさずにいる。
歯を立てられると無意識に足が逃げを打つが、慰めるように脹脛を撫でられた。そうしながらも硬い骨から唇を離さない。
「なんで、そんなとこ」
ただでさえ、じっくりとした愛撫を苦手にしているというのに、他人に触れられることなどほとんどない場所に触れられ続けているという違和感のせいで、どうにも落ち着かない。
そんな神谷と視線を合わせた梶は、足の甲にひとつ口付けを落としてから口を開いた。
「お前、こうやって触られるの苦手だろ」
「……まあ、そうだな」
「で、思わぬところ愛撫すると、反応がいい」
「……」
「慣れろってことだ」
目を細めてそれだけ言って、再びくるぶしと足首に舌を這わし始める梶を蹴り飛ばしたくなりながら、上半身を崩しベッドに倒れ込んで、赤くなった顔を隠すように腕で覆った。